送り吊り出し?――決まり手の名称を考える

《相撲四十八手ならぬ八十二手》

2001年より、それまで七十手だった大相撲の決まり手に、新たに十二手が加えられ、八十二手となった。

七十手では分類しきれないものを加えたのだが、中には「?」と思うものがなくもない。

《送り〇〇》

その前に、改訂以前からあった「送り出し」だが、これはご承知のとおり、相手の背後について、土俵外に出す技。

相手が出る前に倒れれば「送り倒し」になる。

『大相撲の事典』澤田一矢著/東京堂出版28ページイラスト

この「送り倒し」は七十手のときからあった決まり手だが、この名称には何だか落ち着かないものを感じていた。

なるほど「押し出し」にならずに相手が倒れれば「押し倒し」、「突き出し」に対して「突き倒し」、「寄り切り」に対して「寄り倒し」とくれば、「送り出し」に対応するのは「送り倒し」だというのは一応の理屈ではある。

対面して粘る相手ではなく、人間の通常の進行方向に向けて、相手と同じ方を向いて、土俵外に出すのを「送り出し」と付けたセンスはなかなかだと思う。

日常語でも、人を見送ることを「送り出す」と言ったりする。

だが、その形で倒れたから「送り倒し」というのは、木に竹を接いだ感じがしなくもない。

ましてや、八十二手になってから追加された、

送り投げ

送り引き落とし

送り吊り出し

送り吊り落とし

送り掛け

等々、相手の後ろからの技は何でも「送り~」にしてしまうのは、どうも取って付けた感がある。

今場所五日目、宇良が大栄翔に「送り吊り出し」を決めた。

NHKテレビより画面を撮影

これは、俵を背にした状態からクルッと回って吊り出したのだから、なおのこと「送った」感が薄い。

相手の前でも後ろでも「吊り出し」でいいのではないだろうか。

「送り吊り落とし」も同じ。

前述の「送り倒し」も「押し倒し」「突き倒し」「寄り倒し」等でいいと思う。

「送り引き落とし」は進行方向とは逆の方向に倒すのだから、これまた「送った」感じではない。

単に「引き落とし」でも良いが、昔「後ろ引き落とし」という手があったというから、それを適用してはどうだったろう。

「送り投げ」は、これも昔の決まり手「抱え投げ」の方がいい。

月刊『大相撲』(読売新聞社)1981年夏場所総決算号「夏場所熱戦グラフ」より。後述するように『大相撲』誌は協会発表にこだわらず、独自に決まり手を掲載していた。

お前の語感の問題に過ぎないと言われるかも知れない。

しかし無闇に新しい名前を付けるより、由緒ある(?)技名を復活させたほうが風情があるというものだ。

それに、決まり手の数を増やしても対応できない決まり方というのは、どうしても出てくる。

例えば、昨日の記事でも言ったが、七日目の大栄翔-霧馬山戦の決まり手を「引き落とし」というのは、どう考えても無理がある(写真参照)。

NHKテレビより画面を撮影

《協会発表にとらわれなくても良いのでは?》

協会が公式に決まり手を設定する以前は、各新聞で記者が決まり手名をつけて載せていたという。

決まり手制定後でも読売『大相撲』などは、80年代くらいまでは協会発表にこだわらず、独自に決まり手を決めて「かっぱじき」「上手寄り投げ」「外網打ち」等の技名を採用していた。

(今でも解説者などが「かっぱじく」という言い方をすることがあるのだから「かっぱじき」は復活させてもいい)

「送り掛け」は、「後ろ外掛け」「後ろ内掛け」・・・これは、いま私が考えた名称で、いわれも何もないが「送り掛け」よりは無理がないと思う。

各メディアが工夫すれば面白いかも知れない。

相撲甚句「四十八手」に「♫まこと込めたる贈りもの/送り出したらうっちゃられ」という件がある。

「送り投げたら」相手は怒るよね。

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