北勝海の読み方――「ほく-と-うみ」か「ほく-とう-み」か

7月10日、名古屋場所が始まる。名古屋場所に因んだ話題を探していたが、1986年名古屋場所は大関北尾と関脇保志が、それぞれ横綱、大関昇進を決めた場所だった。

旭富士を破って12勝を挙げ 大関昇進を決定的にした保志=北勝海(『大相撲』1986年名古屋場所総決算号「熱戦グラフ」より)

二人はそれまで本名のまま土俵に上がっていたが、昇進を機に、北尾は「双羽黒」、保志は「北勝海」のシコ名を付けられる。

今回は双羽黒は措くとして、保志改メ「北勝海」。

当時のベースボール・マガジン社『相撲』誌表紙

保志改メ北勝海

本人は郷里・北海道十勝市から取って「十勝海」を望んだが、師匠九重が「十勝止まりでは優勝できない」と難色を示し、しかし、郷里の名を入れたいという保志の気持ちも尊重して、北海道の「北」に、十勝から一字「勝」を取り、読みは「十勝」の「十」(ト)と読ませるウルトラCで「ほくとうみ」となった――という話は有名。

[当時の相撲誌には、最初「十勝富士」という名を希望したとしている記事もある。また本人のインタビューによると十勝ダケ(岳?)も候補にあったという]

苦しい読みだが、当時は劇画「北斗の拳」がブームだった頃で、カッコよく思ったものだった。

とはいえ、これにはやはり批判もあって、当時の『大相撲』誌(読売新聞社)86年11月号にも「ホクショウウミ」としか読めないではないか、との読者からの投書もあった。

「北勝海」の「勝」は「トウ」?「海」は「ミ」?

一方、「『勝』という字には『トウ』という読み方もあり、それに『海』は『ミ』と読むこともあり、ホク-ト-ウミではなく、ホク-トウ-ミという読みである」――という説もよく知られていて、相撲関連の書籍にも、そう解説したものもあるとのこと。

だが少なくとも改名当時に、そのような話を聞いた覚えはない。

ただ《北勝海=ほく-とう-み》説の起源(?)と思われるものについて心当たりはある。

「ほく-とう-み」説の発端は相撲雑誌投書か

それは、これも『大相撲』誌、1987年初場所1月号に掲載された読者の投書。上述の「ほくとうみ」の読みに異議を唱えた投書への反論。

漢和辞典を引くと「勝」には「たふ(トウ)」という読みがあることも明記されている。ならば「ほくとうみ」も、あながち無理な読み方ではなかろう、というもの。

これが、少なくとも私が見聞きした「勝=トウ」説では最初のもの。

ただし、この読者も「ほくとうみ」でもいいではないか――というくらいの意見で、それが「北勝海」の正しい読み方だとまでは言わない。また「海」は「ミ」と読むのだとも言っていない。

この方は、同じ投書内で、たとえ「十勝」のトだとしても「当て字」として許容されるのではないかとも言っている。あくまで元々は十勝の「ト」だということで付けられたという認識である。

私の想像だが、この投書にヒントを得て「ほく-とう-み」と読めば無理がないと言った人が別におり、それが「北勝海」の「正しい読み方」だという話になっていったのではないだろうか?

それなら、北勝海(八角)の弟子である北勝富士は「ほくとうふじ」と読まなければならないはずだ。

当時すでに大関ながらパリ公演で兄弟子である横綱千代の富士の太刀持ちを務める(読売『大相撲』1986年九州場所展望号巻頭カラーグラビアより)

北勝富士だけではなく、八角部屋の力士で師匠に因んで「北勝」のシコ名をつけた力士は、いずれも「ほくと」と読む。「とう」と読んだのは現・谷川親方の「北勝力(ほくとうりき)」くらいではないか。

以上のことから「ほく-とう-み」という読み方は、もともと本人や師匠が意図したものではなく、関係のない第三者が言い出して、一部で「通説」化されたものだというのが私の結論。

これは、当の北勝海も、師である北の富士も健在なのだから確認はできるはず。

パリ巡業にて 兄弟子・千代の富士とくつろぐ

一代限りにして欲しかった

私自身の意見を言えば、保志がどうしても郷里の名ををシコ名に入れたかった気持ちはわかる。ただ、それは北勝海一人にして欲しかった。漢字の読みを無闇に新造されても困る。十勝出身でもない弟子にまで同じ読み方を適用するのはやりすぎだと思う。

それに、漢和辞典に載っているとはいえ「勝」を「たふ」と読むのは特殊な読み方で、しかも「耐える」という意味の動詞(勝ふ?)の可能性があり、シコ名に入れるのは無理があるのでは・・・。

 * * *

北勝海は後に横綱に昇進。言わずと知れた現相撲協会理事長・八角親方。

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