▼照ノ富士の技能「相手を伸ばすために自分も伸びた」▼「朝乃山、帰ってこないかな」――千秋楽

いよいよ今場所、そして今年納めの千秋楽だが、その前に、昨日の照ノ富士阿炎戦を、改めて振り返って見る。

阿炎戦に見せた照ノ富士の「技」

というのも優勝インタビューの中で「(阿炎に)起こされる、押し込まれる部分もありましたが?」との質問に「勢いを止めるには、ちょっとでも伸ばさないといけなかったので・・・こっちも伸びないと相手も伸びてくれないので」と謎のような回答をしていたことが気になっていたからだ。

参照https://www3.nhk.or.jp/sports/special/sumomovies/clip/ELPasLFD29TbaC.html

これは阿炎が取組後「土俵際、下から行くことができなかった」と言っていることと関係があるような気がする。

(以下、写真は断りがない限りNHKテレビの画面を撮影したもの)

阿炎、ここでは背中をやや丸くし前傾、膝もまだゆとりがある。

土俵際、弓なりになって残す照ノ富士。まず自分が伸びて・・・、

さらに左足一本で粘る。勝負あったかという場面だが、これで阿炎は体も膝も伸び切る。これが阿炎の言う「下から行くことができなかった」常態。

こうなると、これ以上攻めの続かない阿炎は肩透かしを引く。

この肩透かしで足がもつれたのも、伸びきっていた(伸ばされていた)体が急に縮んだことでバランスを崩したためだろう。

そう考えれば、決して不運で倒れたのではなかった。

足一本の状態で残したのは、二日目の大栄翔戦の時と同じ(この時は右足だったが)。

片足が上がるのは絶体絶命の体勢に見えるが、これは相手の攻めを吸収し、なおかつ「体を伸ばさせる」効果があったのかも知れない。この後の左の抱え手からの突き落とし(小手投げ?)も、ここで相手を伸ばしていたからこそ可能だった。そして回り込みながら、反動で呼び戻し気味のすくい投げで決める。

千秋楽の土俵から

  さて、昨日の話題が長くなったが、千秋楽の相撲。

十両・一山本優勝

十両優勝争いは、三敗の荒篤山が敗れて、一山本は取組前に優勝を決めていたが、今日も勝って十三勝。

中盤崩れた王鵬も、今日は勝って十一勝を上げた。

幕内の土俵から

このあたりで阿炎が出てくると「あれっ?」と思ってしまうが、今日は平幕同士の対戦。相手の隆の勝は今日勝てば敢闘賞。

阿炎、まともに引いてしまい、あっさり負け。昨日、おとといの相撲で力も気合も使い果たした?負けるにしても、もうちょっとそれらしい相撲を・・・という感じで、勝てば三賞の隆の勝とは意気込みが違っていたということか。ややがっかりだったが、また来場所から気合の入ったいい相撲を見せてくれると思う。

翔猿若隆景

立ち合い、翔猿が右に変わるが、若隆景はよく見てついて行き、いったん右差し、低く頭を付ける翔猿を嫌って突き立てて起こし、再び右差し、左からにおっつける体勢。翔猿の引きに乗じて西土俵に寄り切った。

勝負がついたあと、翔猿が観客席の列目あたりまで突っ込んだ。しかも立ち上がろうとして、もう一度手をついて倒れてしまう。

このところ、入場制限で前方の席を空けていたが、その空席に力士がバタバタと音を立てて走り込む姿がお馴染みになりつつあった。

この状態に慣れていると、観客が戻った時、危険な状況になることがあるのではないかと、以前の記事で懸念したことがあったが、溜り席から観客が座っている今場所、やはりこういう事が起きた。来場所からは、また感染状況によって、どのような観戦形態を取るかわからないが、大きな事故になる前に、力士、協会員に注意を徹底して欲しいと思う。

いよいよ今場所、そして今年を締めくくる結びの一番。照ノ富士-貴景勝

立ち合い、頭で当たる貴景勝。照ノ富士は左の前みつに手をかけたが切られる。突き起こして赤房下まで出る。横綱が土俵中央まで押し戻して、しばし離れてにらみ合い。貴景勝がよく見せる右の突き落とし。照ノ富士が、やや、たたらを踏んだところを右ののど輪で攻め立てるが、照ノ富士がのど輪を受けたまま押し返すと、貴景勝、まともな引き。横綱がつけ入って出るのを土俵際、回り込もうとしたが、照ノ富士はよく見て東土俵で押し出した。

貴景勝が赤房下に押して出たときは、横綱、ちょっと見過ぎじゃないかとも思ったが、終ってみれば、照ノ富士が落ち着いて捌いたという相撲だった。照ノ富士は二連覇で初の全勝優勝。

優勝インタビュー、落ち着いて淡々と受け答えをする照ノ富士に「この人は若くして、ちょっと完成され過ぎじゃないのか?」と、変な不安(?)を覚えたが「横綱、明日が誕生日、三十歳になるということですね」と問われると、照れ笑いを見せたので、また変な安心をしたのだった。

「朝乃山が早く帰ってこないかな」

実況の三瓶アナウンサーが、来年の相撲界について北の富士さんに、いろいろコメントを求めると「少なくとも来年一年はは照ノ富士時代じゃないですか?・・・あとは正代も物足りないし、大関を争える力士も見当たらないし・・・だから朝乃山が早く帰ってこないかなということですよ」

北の富士勝昭

「あと三場所、長すぎるんじゃないの?少なくとも僕の周りはみんなそう言ってますよ。『いい加減に許してやってよ』と。俺に言われてもしょうがないからね、だから『放送で言っとくよ』と。協会の人が聞いてたら『余計なこと言うな』と思うかも知れないけど、解いてもいいと思うけどね」

高砂部屋公式ツイッターより 稽古に励む朝乃山(右)相手は部屋の後輩 朝乃若 11月5日

確かに解雇の噂もあったことを思えば、ギリギリの決定ではあったかも知れない。にしてもだ、一年も仕事をさせないということが法的にも許されるものなのだろうか?処分の基準が明確とは言えず、ある種の「ムード」で決定してしまった印象もある。白鵬引退恩赦というわけではないが、年が変わる機会に処分を解いてもいいのではないだろうか。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です